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次の問いに答えなさい。(4点)
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前記事の続きです

※以下、ネタバレ!

 尚、個人的な解釈・記憶違いが多々あるかとは思います。あしからず。

 




 

翌日、朝早くにマジルがやってきた。

「どうしたんだ、こんな朝から……え?今日ここにクラスメイト30人が来る?」

クラスの人気者のマジルが毎日毎日森に通いつめているのを見て、クラスメイトがここに来がっているというのだ。

それはまずい。ここを知られてしまうのは、この少年ひとりだけでも十分まずいというのに、30人も来られちゃ敵わない。

どうにか、追い返さなくてはならない。

「そうだ」

何かアイデアを思いついたヨイチは、マジルに耳打ちをした。

 

たくさんのこどもたちが、マジルの名前を呼びながら森へ入ってきた。

うるう、うるう。うるう、うるう。

見上げると、木の上に、大きな大きなふくろうがいた。羽根を広げて、ふくろうが叫ぶ。

「どうしてこんなところへ来た。悪い子はみんな、おばけが食べてやるぞ!」

こどもたちは一目散に逃げ出す。

お手製のふくろうのかぶりものを取って、ヨイチはげらげら笑った。

「やった、大成功だ!おいマジル、もう出てきていいぞ!」

隠れていたマジルが出てきて、ヨイチとハイタッチを交わす。

「あれだけ脅かせば、もうここにはいられないな。すぐにでも大人たちに話がまわるだろう」

「いなくなっちゃうの?」

「誰にも見つからない、森のもっと奥へ行くよ。マジルどころか大人でも入って来られないほど、森の奥へ」

 

マジルが、ヨイチに抱きついた。ヨイチは戸惑ったが、その小さな背中に腕を回して抱きしめ返した。

ヨイチの肩に顔を埋めて、マジルは泣き出した。

ふいに、グランダールボとの約束を思い出して、マジルから離れる。

「マジル…実は、話さなければならないことがあるんだ。

どうして私の髪が白いのか。どうして私が森にひとりで住んでいるのか」

 

 

ヨイチは、38歳だと言った。だが、生まれたのは152年前だ。

 

ヨイチの父親は医者だった。

父は不老不死の薬の研究をしており、妻や自分自身にその薬を打ったが、効果はなかった。

ところが、ふたりの間に産まれた男の子に変化が起きた。

ヨイチは、4年かけて1歳分の成長をした。

子供の頃は、転校を繰り返した。大人になってからも、いつまでも同じ職場にはいられなかった。見た目が変わらないからだ。

父も母も、ヨイチよりも先に死んだ。生前父は、ヨイチを、彼の師であるクレソン先生に託した。

クレソン先生は植物学者だった。ヨイチは先生のもとで、助手として植物学を学んだ。

それでも、クレソン先生も、ヨイチよりも先に死んだ。

ヨイチは、ひとりになった。

 

天災。戦争。事件。事故。政治。経済。文化。人間。

常人の4倍の寿命を持つヨイチにとって、日本という国は、めまぐるしく変化しすぎた。

恐ろしくて恐ろしくて、森の中へ、逃げた。

自ら望んで、ひとりぼっちになった。

 

「…両親も、友達も、恋人も、絶対に、私よりも先に死ぬんだ!そんなのには、もう耐えられない!」

 

ヨイチはマジルの顔を見ることができなかった。

泣きながら聞いていたマジルが、勢いよく、ヨイチに抱きついてきた。

「やめろ!友だちには、ならない!!」

何度突き放されても、マジルはヨイチを抱き締めた。

 

「何度言ったらわかるんだよ!友だちにはならない!

私はおばけなんだ!152年生きても死なないおばけなんだ!もうここへは来るな!もう二度と!二度と!!」

 

大きな羽根を広げ、マジルを、ドンと強く突き放した。

高い木の上に上って、走り去っていくマジルの姿を見た。

 

「待ちぼうけ、待ちぼうけ……ある日せっせと野良稼ぎ……そこへ兎が飛んで出て……コロリ転げた木の根っこ…」

 

そしてヨイチはひとり、大きな声で泣き続けた。

 

 

 

 

 

-―それから40年が経った。

ヨイチは10年分年をとり、48歳になった。

羽根ペンで記録をしながら

「トマトとバジルを一緒に植えたら、虫がわかない上に、両方ともおいしくなりました。このふたつは、ピザだけじゃなく畑でも相性がいいんだなあ。

何か名前をつけるとしたら、トマトとバジルだから、そうだな、『マジル』なんてのは……」

ヨイチの表情が凍る。思考を振り払うように頭を振った。

「……そうだ、ラジオでも聞こう」

ラジオで世界陸上大会の中継を、実況しながら聞く。

「昔の記録と照らし合わせてみよう」

開いた本のページの隙間から、はらりとなにかが落ちた。

それは一枚の紙片だった。広げてみると、そこに書かれていたのは、

「…待ちぼうけ」

はっとして、すぐに紙片を本の間に挟み、本棚に戻した。

 

ウサギ罠に、獲物がかかる音がした。

「!!この音は、かなり大きいぞ!」

喜び勇んでそこへ駆けつけると、そこにいたのはウサギではなく、もっと、もっと大きな生き物。

ヨイチはそれが誰なのか、一瞬でわかった。

 

-―あれから40年が経った。

48歳のマジルと、48歳のヨイチ。

ヨイチは、マジルの思いを察し、覚悟をする。そして、笑って両腕を広げた。

 

タビュレーターの『0』が、『1』になった。

 

 

 

 

 

 


 







 

あー、本当に、この芝居を観られて良かった。そう思いました。

マジルが抱きつくところと、ラストでは、自然と涙が出てきました。

 

ひとり芝居ですので、マジル少年は実際には誰も演じていません。

ここで書かれてるセリフも「こんな感じ」ってだけで、聞こえてません。

でも、エアなんだけど、小林賢太郎のパントマイムのおかげで、本当にそこにいましたな!笑

 

あでも、いっこだけ……

・ヨイチは4年で1歳分年を取る

・マジル8歳、ヨイチ38歳

っていう情報が出たときに、私の頭、自然と「じゃあふたりの年齢が同じになるのは40年後だねー」って計算しちゃって、オチが軽く読めてしまったこと。笑

でもこれは多分、7:3くらいで、私が悪いです。笑

 

名前に関する個人的解釈、ヨイチは「4年に1歳」もしくは「余りの一人=余一」から来てるのかな。

マジルは劇中で出てきちゃったね。

 

ちなみに大半を占めるギャグパートは、文章じゃ伝えづらいのでカットしました。ww

ドクダミを過信しすぎるクレソン先生とか、ラップとか、歌とかね。

泣いたけど、それ以上に、腹抱えて笑いました。

歌+天丼の組み合わせに、つっくづく弱い私。笑

「どうした、そんなに笑い転げて!マジル、そんなに面白いか!」って言われてしまった。笑

 

あと音楽が徳澤さんのチェロの生演奏のみなんですが、それも素敵でした。

ああ。私のつたない文章力では1%も伝えられない、語りきれない。本当に魅力的な作品でした。

DVD出たら買うんで、TSUTAYAにはしるか、うちに見に来ればいいよ!!!ここでネタバレしちゃってるけどな!!!!wwwwwww

 


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